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フィニシ(phinisi)とは何か。あなたが眠る船と、その造られ方

フィニシ(phinisi)とは何か。あなたが眠る船と、その造られ方

ピニシは帆装であり船体ではない。コモドのリブアボードが実際にどこで造られるのか、ユネスコが2017年に登録した理由、そして良い木造船の見分け方。

文:Asik Travel Editorial Team9/4/20266分で読める

コモド行きの船では、二度目のシュノーケリングと夕食のあいだのどこかで、たいていの人がキャビンの壁を手でなぞり、それが一枚の木であることに気づく。合板に貼った突き板ではない。船体の曲面に合わせて削り出された木が、海を外に留めている。

コモドであなたが寝泊まりするその船は、まず間違いなく南スラウェシの浜で、父親から技を受け継いだ人たちが、設計図より古い方法で造ったものだ。乗り込む前に知っておく価値がある。見えているものの意味が変わるからだ。

そもそも「フィニシ(phinisi)」は船のことではない

少なからぬ数の事業者を含め、ほとんどの人がここでつまずく。 ピニシ(pinisi)が指すのは帆装と帆であって、船体ではない。 マストと帆布の並べ方、つまり2本マスト・7枚帆の構成のことで、19世紀にヨーロッパのスクーナーとの接触を通じてインドネシア諸島に入ってきた。

したがって「フィニシ」とは本来、その帆装を備えたスラウェシのスクーナーを指す。実際にはこの語は観光業界にまるごと飲み込まれ、いまではインドネシアの大型木造リブアボード全般を意味している。その大半はどこへ行くにもエンジンで走り、帆は写真のときだけ揚げる。当社もラブアン・バジョで耳にするとおりの意味で使っているが、元来何を指す言葉だったかは知っておいて損はない。

綴りも揺れる。ユネスコ(UNESCO)は pinisi、当社を含む多くの事業者は phinisiと書く。船は同じだ。

アラ(Ara)、タナ・ベル(Tana Beru)、ビラ(Bira)。船団を造る三つの村

コモド、ラジャ・アンパット、バンダ海で働く木造リブアボードのほぼすべてが、南スラウェシのごく一角の浜から出ている。造船の中心地は タナ・ベル、ビラ、バトゥ・リチン(Batu Licin)。いずれもブルクンバ(Bulukumba)県にあり、ユネスコの記録によれば、住民のおよそ 70パーセントが 造船と、それに続く航海で生計を立てている。

ピニシ帆装の船に限れば、造っているのはボントバハリ(Bontobahari)郡の村 アラの、コンジョ(Konjo)語を話す人たちだ。工場町ではない。船体は屋外の砂の上、道路から丸見えの場所で組み上げられ、その知識は文字による記録ではなく、すでに身につけた人の隣で働くことを通して世代から世代へ移っていく。

あの海岸を車で走ったことがあれば、記憶に残るのはその大きさだろう。30メートルの船体が家々のあいだの木の架台に載り、肋材を空にさらしていて、20メートル先には誰かの洗濯物が干してある。

作業の順序は思っているのと逆だ

ヨーロッパの木造造船は骨組みを立ててから外板を張る。スラウェシの工法は先に船体の板を端と端で継いでいき、すでにできあがった形の内側にあとから肋材を入れる。骨組みの上に船体を造るのではなく、船体のなかに骨組みを造るのだ。

ユネスコが登録した理由

2017年、南スラウェシのピニシ造船の技は ユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載された。対象は特定の一隻ではない。木を削って形にする技術、進水に伴う儀礼、そしてその技能が文書ではなく人に宿っているという事実まで、実践の総体が対象になっている。

壊れやすいのは最後の点だ。図面は放っておいても残る。三つの村の数百人の手のなかにある技術は残らない。鋼とグラスファイバーが安くなるにつれて実践が細っていく危険は現実にあり、登録はそのために存在する。

そこからあなたの休暇までは一本の線でつながっている。いまのところ、これらの船を造り続ける商業的な理由は、リブアボード観光がほぼ唯一なのだ。

2026年に見えるかたち、バロナ(Ballona)

当社が使う最も新しい船体は分かりやすい例になる。10年前ではなく今年仕上がったばかりだからだ。 バロナ(Ballona)は 同じ海岸で、地元産の鉄木から手作業で削り出され、 2026年に進水した。船主によれば、名前はアラの言葉で美を意味するという。ピニシ帆装が生まれた村がまさにアラであることを思えば、うまいネーミングか、あるいは本当にふさわしい名前かのどちらかだ。

全長32メートル、キャビンは8室、定員は最大25名。この組み合わせが実際に買っているのは空間だ。他社が26メートルの船に詰め込むのと同じ人数を、より長い船体に広げてあり、屋内ラウンジが2つ、バウデッキ、操舵室の上にオープンエアのラウンジが取れている。

みんなが気にするのはグランドスイートで、スライドドアの向こうがプライベートバルコニー、手すりぎわにバスタブが据えてある。伝統工法の木造船にあるものとしては少々ばかげているが、最初に埋まるのはこのキャビンだ。

良い船と悪い船の見分け方

木造船の出来には大きな差があり、写真ではその差が消える。確かめておくとよい点がいくつかあるが、どれもキャビンの話ではない。

何でできているのかを聞く。 鉄木とチークなら長持ちする船だ。安い船体は柔らかい木材を使う。掲載写真では見分けがつかないが、5年経ってうねりのなかに入ると挙動がまるで違う。

船齢と直近の改修時期を聞く。 手入れの行き届いた15年落ちは、放置された5年落ちに勝る。新しいことは自動的に良いことではない。まだ何も壊れていないというだけだ。

何メートルに何人乗るのかを聞く。 ゆったりした旅になるか満員バスになるかを決めるのはこの数字で、事業者が最も自分から言いたがらない数字でもある。

船ではなく乗組員のことを聞く。 クルーズディレクター、ガイド、機関担当。実際に潮の流れるダイブサイトのあいだをエンジンで移動する船では、安全の中身は乗組員がすべてだ。

「セーリング」についての正直な但し書き

コモドのリブアボードで、意味のあるかたちで帆走している船はほとんどない。帆は写真のために揚がり、走るのはエンジンだ。日程が、風まかせではなく日の出前にパダールへ着くことを前提にしているからである。帆走そのものが目当ての休暇なら、それは別種の旅なので、問い合わせの際にそう伝えておくとよい。

寄り道する価値はある

スラウェシがそもそも旅程に入っているなら、タナ・ベルは本当に良い立ち寄り先だ。入場券もビジターセンターもなく、そこが肝心なところだ。造りかけの船体のあいだを浜沿いに歩いても、人はたいてい気に留めない。仕事中だからだ。

旅程に入っていなくても、この船の内側で三日間暮らすことにはなる。それが次善の入門になる。

Labuan Bajo, Flores

バロナで過ごす3日間

当社の2泊3日コモドツアーは現在2隻で運航しており、バロナはその2026年建造の一隻だ。船を選び、キャビンを選べば、問い合わせの前に料金を確認できる。

キャビンと料金を見る料金 ¥58,600 お一人様あたり

コモドの旅の全体像については、 リブアボードと日帰りツアーの比較という記事があり、 2026年の国立公園料金 については別記事で項目ごとに整理してある。